セロトニンに関連する薬物としては、
セロトニン受容体にくっついて作用するもの、あるいはくっつくのを遮断するものの他に、
セロトニンの再取り込みを阻害するものがある。
そもそもセロトニンは、トリプトファンから合成された後、
小胞というところに貯蔵される。
そして何らかの刺激が加わることによって
この小胞からセロトニンが出てくるのである。
これを「遊離する」という。
遊離したセロトニンは受容体にくっつこうとするわけだが、
受容体の数には限りがあるので
そのうちあぶれるセロトニンが出てくる。
あぶれたセロトニンは、2種類の経路によってバランスをとろうとする。
1.小胞に存在する受容体(シナプス前5-HT受容体)にくっつくことによって、
小胞からもうこれ以上セロトニンを遊離させないように働きかける。
これを「負のフィードバック」という。
このシナプス前5-HT受容体に、セロトニンがくっつかないように別の物質で遮断すると、
フィードバックがきかなくなり、セロトニンはどんどん遊離し続け、
最終的には小胞中に貯蔵されていたセロトニンはなくなってしまう。
これが「枯渇」である。
この代表的な薬が、レセルピンである。
2.神経終末に存在する選択的セロトニントランスポーターによって
セロトニンが小胞内へ戻される。
このことを「再取り込み」という。
いわばリサイクルである。
ここの経路を阻害する薬には2種類ある。
・セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
(ミルナシプラン)
・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
(フルボキサミン、パロキセチン)
うつ病やパニック障害などに対しては、
このSNRIやSSRIの薬物が、現在の主流となっている。
これらの薬の効果の発現までに時間がかかる仕組みはまだよくわかっていないらしいが、
シナプス間隙(小胞と受容体の間)にセロトニンが増えることによって
フィードバック機能が働き、遊離を抑制してしまったりすることもあるようだ。
時間が経つにつれ、小胞にある受容体の脱感作で、
次第に遊離セロトニンが増えるということのようである。
他にも、セロトニン受容体の増加などが考えられているらしい。
いわば、人間本来のもっているホメオスタシスの機能が働くということかもしれない。