サーカディアンリズム(目覚めや睡眠のサイクルなど生活のリズム)の制御に関する遺伝子は、双極性障害の躁病相で中心的役割も果たしているかもしれない。
時計遺伝子はサーカディアンリズムを制御する中心であるが、この遺伝子に、ある特定の変異のあるマウスは、ヒトの躁病の行動と非常に似た行動を見せた。リチウム(双極性障害の治療に使用される薬物)を投与すると、多くのマウスは正常な行動に戻った。
この研究結果は、研究者を交わし続けるメカニズムをもつ双極性障害に、さらなる研究への出発点として役立った。
「躁病がどのように発症するのか、また、躁病の治療がどのように作用しているかを研究するのに、非常に良い躁病のモデルを私たちに与えてくれます。なぜなら、安定剤の作用の多くが謎だからです」と、Colleen McClung氏(研究のsenior authorで、ダラスのthe University of Texas Southwestern Medical Centerで精神医学の助教授)は話す。「双極性を研究するのは困難でした」
David J. Earnest(MedicineのTexas A&M Health Science Center College of Medicineの神経科学及び実験治療学の教授)はつけ加える。「実際、患者が双極性障害を経験している時、サーカディアンリズムが乱れています。この動物モデルで、時計遺伝子の変異は双極性障害と非常に似通った行動パターンを作り出します」
科学者たちは、サーカディアンリズムが精神障害、特に双極性障害に関係があるかもしれないと、長い間疑ってきた。
双極性障害は、エネルギーの変化や機能の能力とともに、気分が非常に高揚したり、非常に低下(うつ)したりと、揺れが交互にくる特徴がある。米国国立精神衛生研究所によると、約570万人のアメリカ成人(18歳以上の人口の約2.6%)が双極性障害かもしれないという。
この障害を有するほとんどすべての人はまた、睡眠/目覚めやホルモン、食欲、体温などの日内周期の機能が不規則である。睡眠/目覚めのサイクルの大きな乱れは、双極性の症状の引き金となる。そして、リチウムなどを使った双極性障害の治療の多くは、サーカディアンリズムを変えることができる。
時計遺伝子(サーカディアンリズムに関わる中で最も重要な遺伝子の1つ)がまた、この障害に関係しているかもしれないという示唆があった。けれども、決定的な証拠はない。
「私は、常に関係があると考えていますが、ほとんどの研究は相関関係で」と、Earnest氏は語る。「私たちは、サーカディアンリズムの乱れの間に、決定的な関係があると本当に言うことができませんでした。それは単に関連性にすぎません」
今週の全米科学アカデミー会報で発表された新しい研究で、McClung氏らは、双極性障害のヒトと類似性があるかどうか調べるために、時計遺伝子に変異を有するマウスで実験を行った。
事実、マウスは過剰に活動したり、多くのリスクを取ったり、コカインや砂糖などの『報酬』物質のために優先したりした。
そして、リチウムをマウスに与えると、彼らの行動は安定した。
「彼らが躁病の段階にあるとき、行動全体が双極性患者に非常に似ています」と、McClung氏は話す。「このことは非常に重要です。なぜなら、ヒトの躁病の良いモデルでも、完全なモデルではなかったからです。これは今まで記述された中で最も完全なモデルです」
研究者は、脳のどの部分が関与しているかを決定しようと、一歩先に進んだ。機能的な時計遺伝子をマウスのドパミン細胞内(ドパミンは報酬や気分の制御に関与している)に戻すと、これも躁病の行動のいくつかを修正したことが分かった。
「これはおもしろいことです。というのも、時計が機能している脳の領域を正確に指摘しているのですから」と、McClung氏は語った。「私たちは、時計がそこで何をしているのかを本当に知りませんでした。時計がドパミン活性を制御しているかのようですし、これらのタイプの行動を引き起こしているのかもしれません」
しかしEarnest氏はまた、いくつか警告を発した。
「マウスの全体的な行動は、双極性障害の患者で見られるものと非常に似ているように見えます」と、彼は話す。「しかし、行動で見られるものが、双極性うつ病に関する臨床的症状と、どのように完全に一致するか?私たちはいずれにせよ、双極性うつ病に対する動物のモデルを充分に表しているか議論することができます」
(ロイター - 2007年3月20日)
いつもそうなのですが、今回は特に訳に自信がありませんのであしからず。
いずれにしても、サーカディアンリズムと双極性障害に関連性があるらしいということで、
これには時計遺伝子の変異が関わっていて、
単に生活のリズムを変えるだけではだめということのようです。