高脂血症薬は、高齢者の認知症の主な原因であるアルツハイマー病の進行を遅らせるのを助けるかもしれないと、フランスの科学者たちはこのほど発表した。 342人のアルツハイマー病患者で行った3年の研究で、高コレステロール値の患者にスタチン系の薬を与えると、与えなかった人ほどには、この病気の発症が早くはなかったことがわかった。 フランスのリールの大学病院で教授をしているFlorence Pasquier氏は、この薬物が「アルツハイマー病における認知機能の低下を遅らせ、神経保護効果を有しているかもしれません」と話す。 この研究において130人近くの患者は、高コレステロール値を有していた。約半分の人にスタチン系の薬を与え、残りの人たちには何の治療も行わなかった。 この研究結果は、雑誌Neurology Neurosurgery and Psychiatryで報告され、高コレステロール値がアルツハイマー病の進行に一役かっているかもしれないということを示唆する、ヒトと動物の他の研究結果を支持する。 この研究の患者の大部分は女性だった。平均年齢は73歳である。 病気の進行は、薬物を飲む女性に対して1年あたり1.5ポイントで評価され、対してスタチン系薬物で治療を受けなかった人で2.4ポイント、正常なコレステロール値の人で2.6ポイントだった。 この薬物は世界中の何百万人もの人々に処方される。主なスタチン系には、ファイザー社のリピトール、メルク社のゾコール、アストラゼネカ社のクレストールがある。これらの薬物は、体内で生成する量を調節する酵素を阻害することによってコレステロールを減らす。 雑誌の社説で、オランダのネイメーヘンの大学のメディカル・センターのFrank-Erik de Leeuw博士は、アルツハイマー病に対するスタチン系薬物の有用性について結論を出す前にさらに研究が必要であると記述した。 「コレステロールと、その治療、アルツハイマー病の発症の間の因果関係に相矛盾する証拠があります」と、彼はつけ加えた。 アルツハイマー病は世界中で約1200万人の人に影響を与えている。 記憶や知能を奪う進行性の病気に対する治療法は全くないものの、薬物療法が進行を遅らせるかもしれない。 (ロイター - 11月16日)