抗うつ薬が自殺のリスクを増加させるかもしれないという関心が広まっているが、イタリアの精神疾患の専門家は、薬物が正しく使用されない場合にのみ、本当だろうと話す。 ランセットで3月17日に発表されたエッセイで、Franco Benazzi, MD, PhDは双極性障害(双極性障害IIと呼ばれる)の、一般的だがあまり認識されていない型について記述している。 この障害はしばしばよく誤診されるため、患者たちがしばしば抗うつ薬単独で誤った治療をされ、そのことが問題をさらに悪化させると、精神医学の教授はWebMDに語る。 「これらの患者は、気分を安定させる薬物を使用する必要があります。それでも、うつ症状が持続するなら、抗うつ薬を追加することができます」と、Benazzi氏は話す。「抗うつ薬単独で治療すると、実際躁症状を増大させて、病気を悪化させます」 ・双極性障害IIとは何か? 双極性障害はかつて躁うつ病として知られ、極端に上がったり極端に下がったりする劇的な気分の変動で特徴付けられる。双極性障害IIはこの病気のそれほどひどくない型であると考えられ、軽躁病として知られる軽〜中程度のレベルの躁病である。 双極性Iの患者には、精神症状があるものの、幻覚症状や妄想は双極性IIでは起こらない。 気分の変動が双極性Iほど明白でないので、双極性障害IIを診断するのに問題が残されている。患者はしばしば、うつ症状によく苦しむため、非常に多くは抗うつ薬のみで治療される。 「うつ症状は認識されますが、双極性障害はされるというわけではないのです」と、Benazzi氏は話す。 この問題は子供や青年期で特に一般的かもしれない。 「注意欠如多動性障害(ADHD)や大うつ病性障害のように双極性障害の誤診は一般的で、気分の安定剤の代わりに興奮剤や抗うつ薬を使用することが悪化させるかもしれません」と、彼は述べる。 Benazzi氏は、現れている症状がうつを示す患者は、躁病や軽躁病の症状かどうか評価されるべきであると記述している。双極性障害と診断されれば、治療は抗うつ薬のあるなしに関わらず、リチウムのような気分を安定させる薬物を使用するべきである。 うつ症状のある患者誰にでも抗うつ薬単独で広く治療されていることは、これらの薬物を服用する患者の間で自殺の増加が報告されていることについて説明がつくかもしれない。 「抗うつ薬に関連する自殺はおそらく、時々は薬物ではなく、うつ症状の治療に、ごちゃ混ぜに抗うつ薬のみを使用した臨床医によって引き起こされたものでしょう」と、Benazzi氏は結論づけている。 ・さらに多くの研究が必要 研究者のRif S.El-Mallakh, MD(the University of Louisville School of Medicine)は、近年臨床医が双極性障害IIを特定できるようになってきたと話す。しかし、彼は、まだまだ多くの患者がまだ不適切な治療を受けているとつけ加える。 El-Mallakh氏(精神医学のassociate professor)は、躁病や軽躁病の症状の頻度を増加させることに加えて、抗うつ薬がうつ症状を悪化させ、将来うつ病になる可能性を増加させると、WebMDに語った。 双極性の患者が、1年以内に躁病や軽躁病の症状を4回以上経験することは急速交代型(rapid cycling)として知られている。 抗うつ薬の導入前には、双極性障害において急速交代型はかなりまれで、患者のちょうど2%〜3%に起こると、El-Mallakh氏は話す。最近は20%〜25%の患者が急速交代型を経験すると彼はつけ加える。 研究者たちは、双極性障害IIや関連する障害のスペクトルにおいて、より多くの研究が必要であることに同意している。 病気が正しく特定されるまでに、8〜10年誤診されていた双極性障害の平均的な患者において、そのことを示す研究を、Benazzi氏は指摘する。 「うつ病は、障害が進行するにつれ、より悪くなる傾向があります。特に患者が長年誤った薬物を服用しているなら」と、彼は語る。 (WebMD-2007年3月15日)