検死を行った研究によると、アルツハイマー病で見られるような神経原線維変化(neurofibrillary tangles)として知られる脳障害はまた、高齢者において認知症のあるなしにかかわらず、損なわれた歩き方と関連しているという。 「高齢者の黒質(パーキンソン病と関係のある脳の領域)の変性が多いと、歩き方に問題が多いです」と、論文の代表執筆者であるJulie A. Schneider博士はロイター・ヘルスに語った。この結果は認知症によって変わりがない。 「アルツハイマー病の範囲は広く、これまで認められていた以上に、非常に国民の健康上の関心を引き起こします」と、Schneider氏は話す。「これらのデータから、記憶の問題に加えて、あるいはそうでなくても、アルツハイマー病の人々は、歩行やバランス上の問題を抱えているかもしれないことが示唆されます」 この研究で、シカゴのラッシュ大学メディカルセンターのSchneider氏や同僚たちは、特発性のパーキンソン病でない86人の死亡者でパーキンソン様の徴候や、黒質における脳の変性を調べた。彼らは、歩き方や動きが乱れたり、硬くなったり、亡くなる直前の震えの徴候を評価するのに、統一化したパーキンソン病の評価尺度(Unified Parkinson's DiseaseRating Scale)を用いた。 Annals of Neurologyでの報告によると、黒質の変性は研究対象者の78%に存在していた。変性の平均値は1500以上だった。重複因子を考慮に入れる分析では、彼らの脳の変性と歩き方の異常の存在との間に強いつながりが見られた。 関節炎や卒中のような、原因の明らかでない歩き方の問題は「アルツハイマー病など、将来認知症になる前兆であるかもしれません。私たちのデータは、これらの歩き方の問題は、病理学的に脳にアルツハイマー病がすでにあることを示しているかもしれないということを示唆します」と、Schneider氏は話す。 研究者たちは、黒質において脳のある酵素の濃度を測定することによって、黒質の機能的な状態を研究する計画をしている。「この物質が枯渇しているなら、これを増加させる薬剤が歩行の問題を抱える高齢者に役立つかもしれません」と、Schneider氏は言う。 「さらに、私たちのチームは脳の他の領域や、これらの他の領域において、病理学的にアルツハイマー病としてずっと考えられてこなかった徴候をどのように引き起こしているのかを調べているところです」と、彼女はつけ加える。 SOURCE: Annals of Neurology January 2006. (ロイター - 2月1日)