重症急性呼吸器症候群(SARS)は、まさしくその名の通り、呼吸器系の病気を示す。しかしSARSはまた、脳組織にも浸透し、中枢神経系に重大な問題を引き起こしうると、Clinical Infectious Diseasesの10月15日号のオンライン版に記事が掲載されている。
SARSという、コロナウイルスが原因の致命的な病気は、2003年2月にアジアで、IDSAによって最初に報告された。この病気は通常、感染者が咳をして空気中に散布された、コロナウイルスを含む小滴に触れることによって移される。他の症状には高熱、頭痛、身体の痛み、肺炎などがある。しかしながら、中枢神経系病気を示す患者もいる。2003年のアウトブレイクの際、中国でSARSの患者を治療して、自分も感染したケースが報告されている。
彼は、通常のSARSの症状、発熱、寒気、頭痛、筋肉痛を示したが、入院してから、視力障害を起こし、じっとしてられないとか、錯乱状態といった中枢神経系の症状が次第に悪化した。コンピュータ断層撮影法でスキャンすると、脳障害を示していた。彼は入院してから約1ヵ月後に亡くなり、脳組織を調べると、SARSのコロナウイルスが発見された。また、Migのレベルが高いこともわかった。Migは、ケモカインと呼ばれる一種の免疫システムの監視員で、ヒトの血流や脳に存在しているものである。Migが多いのは、中枢神経系が感染したからかもしれない。研究者たちはまた、Migが免疫細胞を、ウイルス感染して炎症を起こした脳に引きつけることによっ
て脳がダメージを受けたかもしれないと推測した。
筆頭著者であるGuangzhou Institute of Respiratory DiseasesのJun Xu, PhDと、論文指導者である中国広東省のKey Laboratory of Functional ProteomicsのYong Jiang, PhDによると、中枢神経系感染で、SARS患者に脳障害を引き起こす役割を果たすMigを抑制する方法がいくつかあるという。「シグナル経路を阻害する特定の阻害剤のように、Migの放出を抑制するいくつかの方法があるかもしれません。中和する抗体や特定のペプチドに結合するといったアプローチで、Migに誘導される脳のダメージをブロックする試みがあります」と、Jiang博士は話す。
Guangzhou Institute of Respiratory Diseasesで治療を受けたSARS患者の4〜5%は、中枢神経系の症状を体験したと、Xu博士は言う。したがって、医師たちはこの病気に罹った患者を診察した際には、脳に感染している可能性を考慮する必要があった。免疫抑制剤は脳にSARSコロナウイルスが増殖を起こすかもしれないので、慎重にその人に合わせて与えられるべきである。また、他の病原体に"重複感染"すると、SARSの有害な作用が脳に生じるかもしれない。「SARS患者が他の症状を示すような病原体に重複感染しているかどうか、医師は脳障害の防止のために、より多く注意を向けるべきです」と、Xu博士とJiang博士は言う。
(rxpgnews - 9月15日)
IDSAというのが何なのかわからなかったが、
要は、SARSに感染したら脳にも感染するおそれがあるので、
そのことを考慮しながら治療すべきということのようだ。