イギリスの研究で、少なくとも5年間ホルモン補充療法を続けると、卵巣癌になりやすいかもしれないということが分かった。 この研究結果は、the U.K. Million Women StudyのValerie Beral, MDらが行ったものによる。 彼らはイギリス在住の100万人以上の女性に呼びかけ、1996年に研究を開始した。 Beral氏のチームは、5年間研究を行い、少なくとも5年間ホルモン補充療法(HRT)を行っている女性の方が、HRTを一度も行ったことのない女性よりも卵巣癌の発症が20%高く、卵巣癌で亡くなる人も23%高いことがわかったという。 この調査結果に基づき、研究者は、「1991年以来、英国において、HRTの使用で卵巣癌になる人が1,300人増え、悪性腫瘍で亡くなる人が1,000人増える結果となった」と記述している。 しかしながら、米生殖医学会は、女性が短期間HRTを使用するのは更年期症状を緩和するのに有害でないと述べている。 ・HRTの研究 この研究が始まったとき、女性は平均で約57歳だった。彼女たちは、現在および過去のHRT使用を報告した。2/3近くの人は約3年後にHRTの追跡調査を終了した。 研究者は、非黒色腫型皮膚癌以外の癌の履歴のある女性と、両方の卵巣を外科的に取り除いた女性を除いた。94万8000人以上の女性が残った。 半数の女性はそれまでに、HRTを行ったことがあった。そのうち、現在HRTを行っている女性は30%で、過去にHRTを行った人は20%である。 研究者たちは平均5年間女性の追跡調査を行った。その間、2,273人の女性が卵巣癌と診断され、そのうち1,591人の女性が卵巣癌で亡くなった。 ・HRT研究の結果 5年で、HRTを行った約2,500人が卵巣癌になり、約3,300人のHRTを行った人が卵巣癌で亡くなったと、Beral氏のチームは述べる。 卵巣癌のリスクの増加は、HRTを現在行っている女性や、少なくともそれまで5年間行った女性にのみ起こっている。 HRTをやめた女性、そしてHRTの使用が5年未満の女性は、HRTを行ったことのない女性と比べて、卵巣癌のリスクは増加しなかった。 HRTのタイプは結果に影響しなかった。 この研究はランセットで発表されたが、HRTが卵巣癌を引き起こすということを立証していない。 しかし、年齢や閉経してからどれだけ経ったか、喫煙、身体的活動、第一子出産年齢、BMI、アルコール消費量、経口避妊薬の使用歴、社会階級、地理的位置などの因子を調整して、この結果が得られた。 ・HRT論説 この研究で、HRTの使用で「小さいと考えられるかもしれないが、莫大な数の女性が卵巣癌のリスクにさらされている」ことが分かったと、ランセットの論説で記している。 長期のHRT使用で、他に健康上のリスクが分かっているこれまでの研究に基づき、HRTの使用は減少していると、論説委員のSteven Narod, MD, FRCPは述べる。 Narod氏はthe Women's College Research InstituteでFamilial Breast Cancer Research Unitを指導し、トロント大学の公共健康科学部の教授でもある。 「卵巣癌に関するこれらの新しいデータで、HRTの使用がさらに減ると予想しています」と、Narod氏は記述している。「また、卵巣癌で亡くなる女性が減ることを願っています」 ・短期的なHRT使用 米生殖医学会(ASRM)はこの研究についての声明を出した。 「エストロゲンの長期使用は卵巣癌のリスクを増加させるように見えますが、女性は更年期もしくは更年期前後の対症療法に対する短期使用は卵巣癌のリスクをそれほど増加させないことを再保証すべきです」と、Robert Rebar, MD, ASRMのエグゼクティヴ・ディレクターは声明で発表している。 「これらのデータにthe Women's Health Initiativeの最新のデータを加えて、エストロゲンの短期使用が症状のある女性にはまったく害ではないということを再保証します」と、Rebar氏は語る。 (WebMD - 2007年4月19日)