狂牛病のような病気に感染したシカの筋肉は、感染性のプリオンを運び、病気を拡大する。このことは、シカ肉から人間にも広がる可能性があることを意味すると、研究者たちはこのほど報告した。 慢性消耗性疾患(CWD)に感染しているラバジカから取り出した脚の筋肉組織を注射して、特別に飼育したマウスに感染させたという。 シカの肉に感染性がないとずっと強調してきたが、この研究では感染するかもしれないことが分かったと、ケンタッキー大学の研究者であるGlenn Telling氏は話す。 「私がシカの肉を食べるなら、慢性消耗性疾患が風土病である領域のシカの肉を食べるのは気持ちが良くなかったでしょう」と、Telling氏は電話取材で語った。 慢性消耗性疾患は伝染性海綿状脳症(TSE)で、羊のスクレイピーや、牛スポンジ様脳症(BSE)、狂牛病(牛の、人ではヤコブ病(CJD))といった病気の仲間の1つである。 米国の西〜中西部やカナダの地域にわたって、シカやヘラジカで発見されている。誰も、それがどのように広まるかをまったく理解していない。 スクレイピー、BSEや他の病気のように、徐々に脳を破壊し、常に致命的である。それはプリオンと呼ばれる異常な神経系タンパク質によって引き起こされる。 人がCWDになるという証拠はまったくない。けれども、1980年代にイギリスでBSEが牛の群れで広がってから、人々はvCJDと呼ばれるCJDの変形型にかかり始め、それは感染した牛肉を食べることに関係していた。 イギリスでは、153人の人が、おそらく、あるいは確実にvCJDで亡くなっており、6人がvCJD患者の疑いがあり、まだ生存している。 Telling氏と同僚たちは、シカの肉の感染力を検査する安定した方法を使用し、CWDに影響されやすいように特別に飼育したマウスを用い、次にマウスに感染したシカの脳や筋肉組織を注射した。 マウスは病気になり、投与量が高ければ高いほど、病気は一層悪くなったと、サイエンス誌で報告している。 「人々がCWDに曝露した結果、人間のプリオン病を発症するかどうかわかりませんが、人々がBSEに対する曝露の結果として、プリオン病を発症することはわかっています」と、Telling氏は話す。 「肉から感染するルートが最も可能性として明らかで、このことがこれを記述した理由です。」 専門家は、CWDに感染しているかもしれないシカやヘラジカを扱う場合、注意するように既にアドバイスしている。一般に、牛の筋肉の肉はプリオンを運ぶかどうかわかっていないが、脳やある器官は運ぶことがわかっている。 「種の壁を越えると、プリオンがどのように振舞うのかを予測することは難しいです」と、Telling氏は語る。 (ロイター - 1月26日)