心臓発作のあと広く使用されるアミノ酸のL-アルギニンサプリメントの摂取で、心機能は改善せず、死のリスクの増加と関係していることが、新しい研究でわかった。 L-アルギニンは、高血圧、狭心症、心不全、および性機能不全の人々に対して効果があるとして販売されている。これまでの研究から、L-アルギニンには血管の堅さを減少させる可能性があるとされてきた。 この最新の報告は、これまでの研究に反するが、アメリカ医学会誌の1月4日号に掲載され、6人の患者が死亡して早期に終了した臨床試験に基づいている。 「L-アルギニンの服用を6ヵ月間続けたものの、心機能を改善しませんでした」と、この研究論文の共著者であり、ボルチモアのジョンズホプキンズ・メディカルスクールの薬学教授であるGary Gerstenblith博士は話す。「L-アルギニンは心機能に効果がありません」 研究者たちは、L-アルギニンが一酸化窒素の有用性、つまり、それが心臓発作のあと心臓が回復するように心臓や心臓の血管における負荷を低下させるということを広めることを望んでいた。「私たちの仮説は、L-アルギニンに効果があるだろうということでした」と、Gerstenblith氏は話した。 Gerstenblith氏たちは研究で、L-アルギニンかプラセボ(偽薬)のどちらか3gをランダムに、6ヵ月間毎日153人の心臓発作を起こした患者に割り当てた。6ヵ月目に、研究者たちは、L-アルギニンが血管の堅さを減少させず、駆出率(ejection-fraction;左心室内の血液が心臓の拍動で何%送り出されるかというもので、心機能の指標となるらしい)が改善されず、臨床結果も改善しなかったことがわかった。 事実上、プラセボを服用していた患者に比べて、L-アルギニンを服用していた高齢の患者の死のリスクは増加したことがわかった。L-アルギニンを服用したグループの6人の患者が6カ月の研究期間の間に亡くなったが、プラセボのグループでは誰も亡くならなかった。このため、研究者たちは治験を早く終わらせることになった。 「心筋梗塞のあと、L-アルギニン療法を患者に与えるべきではありません」と、論文著者は記述している。「血管の堅さの非観血測定の結果は変わりませんし、左心室性機能も改善しません。びまん性アテローム性動脈硬化症の高齢の患者のL-アルギニン療法は臨床結果を悪化させるかもしれません」 L-アルギニンの心臓への効果における研究を自分で行った1人の専門家は、L-アルギニンで効果がなかった理由が、投与量が少な過ぎたからであると考えている。 「私たちの研究では、効果を得るためにL-アルギニンを1日当たり約20gを投与する必要があったと考えました」と、Yale University School of Medicineで内服薬の助教授である、Stuart D. Katz博士は話す。「私たちは、20gを投与するという合理的な方法を思いつくことができなかったのです」 Katz氏は、L-アルギニンを1日に20g摂取するのに40カプセルを必要とすると指摘した。「だれも1日に40個カプセルも服用しないでしょう」と、彼は話す。「効果が出るような投与量を与える方法がないと考えたために、私たちはあきらめたのです」 現在の研究での投与量は、L-アルギニンの血中濃度で効果がなかったので、Katz氏は、L-アルギニンを服用する患者が、そのせいで死亡率が増加したとは考えない。「それは単に偶然かもしれません」と、彼は話した。 Katz氏は、その投与量が有害かどうかわからないとつけ加えた。しかし、この研究における研究結果を考えると、それは可能である。 「このサプリメントや、恐らく他のサプリメントが慎重に評価される必要があるという警告の旗を上げます」と、彼は話す。「私は、この研究に基づけば、心血管の健康を改善する手段として、L-アルギニンサプリメントを使用することを勧めないでしょう」 (HealthDay News - 1月3日)